アラーグチー外相はこの共同書簡について「中国・天津でのSCO上海協力機構首脳会合の傍らで署名されたこの共同書簡は、欧州諸国による『スナップバック・メカニズム(別名;トリガーメカニズム、イランに違反があった場合に制裁を復活させるシステム)』発動の試みが法的根拠を欠き、政治的破壊をもたらす動きであるとみなされる、という我々の確固たる立場を表明している」と語っています。
また、アラーグチー外相は「JCPOA包括的共同行動計画(通称;対イラン核合意)と国連安保理決議2231に最初に違反したのは米国であり、その後、欧州は自らの約束を遵守・履行せずに違法な制裁への同調を決定した」と述べました。
さらに「この共同書簡において、我々は権利と義務は不可分であるという国際法の基本原則も強調した。責務を履行しない国には、自らが毀損した合意の利益を享受する権利はない」とコメントしました。
続けて「多国間外交の有効性は、この論理に基づいてのみ維持されるだろう。危機に瀕しているのは、イランの権利だけでなく、国際協定の完全性と有効性でもある。約束の履行におけるダブルスタンダード的な行動や法的手続きの濫用が容認されてしまえば、集団安全保障の基盤が著しく脆弱化することになる」と語りました。
そして「国連安保理の主たる任務は、国際社会の代表として世界の平和と安全を維持することである。いわゆる欧州トロイカとされる英独仏の提案は事実上この使命を裏切る形となっている。それは、今回の提案が安保理を世界の安定を維持する機関から、圧力行使と強制のための手段へと変貌させているからである」と述べています。
イラン当局は、米国と英独仏がJCPOAプロセスを妨害し、合意に基づく責務を履行していないことを常に強調してきました。したがって、イランの視点から見れば、JCPOAのような合意に基づく義務に違反した国は、その合意の利益を享受する法的正当性を持たないことになります。イランは、JCPOAのような合意は相互の義務に基づいていると考えています。つまり、一方の当事者が義務に違反した場合、他方の当事者は対抗措置を講じ、その合意から違反者が得る利益を制限する権利が生じるのです。
約束に違反した国は合意に定められた利益を得るべきではないというイランの見解は、同国の外交政策において戦略的に重要な意味を持っています。イランは約束遵守の必要性を強調することで、国際合意が信頼と約束の相互履行に基づくべきであることを示そうとしており、このアプローチによりイランはルールに基づく当事者として位置づけられています。
一方、イランは、核合意への違反国の不当な行動に異議申し立てにより、それらの国による「トリガーメカニズム」などのメカニズムの濫用を阻止し、これらの国による一方的な行動の政治的コストを増大させています。この視点から、イランは核交渉や地域交渉においてより強い立場を取れるようになります。また、イランは、他国による約束違反を理由に、現実的かつ検証可能な保証を求めています。
イランは、合意の違反国が制裁、軍事作戦、あるいは経済分野での圧力行使への支持により合意の枠組みから事実上逸脱して非難し、彼らが合意の恩恵を受けるべきではないと主張しています。この立場は、国内では国家の威信と政治的独立の擁護と見なされており、国際舞台においてイランが西側諸国の圧力に対してより耐久力があることを示しています。
イランの外交政策におけるこの視点は、外圧への対抗アプローチであるのみならず、正義、相互尊重、そして真の約束順守に基づく国際体制の再定義という、より広範な取り組みの一環でもあります。この姿勢によって、イランは、履行義務のない合意は無意味であることを示そうとしているのです。
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